「すみません。咲に早くブレスレットを返したくて」


「ふん、言い訳を考えてきたのか?」


「盗ってないって言ってるじゃないですか!咲もわかってくれてます!」


「咲は優しいからお前の味方をしてるんだろう」


咲が横で「違うよ!」と言っても聞く耳持たずだ。


「どうやってあの男に取り入ったんだ?」


「え?」


「お前なんかに興味を持って……あいつも変わったやつだ。お前を気に入るなんてどうかしてる」


「気に入る?違います……あの人は優しいから。困ってる人を放っておけないだけで」


自分で言ってて少し悲しくなった。


私を気に入ってるわけじゃない。


たまたま私が許婚で天馬くんと接点があるだけで、きっと他の子が許婚でも同じように優しくしてあげているはず。


「お父さん酷い!そこまで言うことないじゃん!」


咲が私の腕を引っ張り「行こう!」と言ってくれた。