「俺も、楽しかった」


そう言っても、悠くんは私の前を立ち去ろうとしない。


「里奈ちゃん......」


名前を呼ばれて、悠くんを見る。


真剣な瞳とキュッと結ばれた唇は、彼の覚悟を改めて示していた。


「1週間、経ったよ。少しでも......俺の方に、傾いてくれた?」


そう聞かれるけれど、私の答えは一つだけ。


一切変わることのなかった、この気持ち。


「ありがとう。ごめんね、まだ、冬夜くんが好きなの。きっと、もう、一生このまま」


「......っ。そっか」


切なげに歪んだ悠くんの表情に胸を痛める資格も私には無い。


この表情をさせているのは私だ。


「っ、でも、このまま友達でいさせて......」


わがままだって、都合が良すぎるって、わかってる。


「うん......」


それでも、優しい彼は頷いてくれた。