「聞いて」


「ない! じゃなくて一月に来たばっかじゃん」


純は、俺の質問を断ち切りキッパリ否定すると、苛立ちを抑えつつ早口で問い返した。

……倫の奴また言い忘れたな。

再会早々波乱の予感に心の中で溜息を付く。


「マジ帰国」


純は、俺のトーンダウンした返事に思い切り眼を見開いた。


「はあっ!? ……マジかよ」


そして実に嫌そうな驚愕声を発し呆然と俺を見上げ力無く呟いた。

……最悪の再会。

帰国にあからさまなノーウェルカムを見せ付けられた俺は、さすがに苛立ちを抑え切れず思い切り溜息を落とす。


「……聞いて」


「ねー!」


俺は、先程以上に力強い怒り声と表情での否定に胸で腕を組み呆れ眼で頷き同意した。

その姿が更に純の怒りに火を付けたのか、今すぐ殴りたい! という様子で拳を握り締め思い切り睨み上げてくる。

その端正で鋭利な眼に普通の奴なら震え上がるだろうが俺には無駄! 慣れまくり。

少し目線の低い純のギラッとした眼を俺も負けじと仏頂面で見下ろした。

ただでさえ時差ボケの名残りで眠い上に視界不良好、気分は最悪!

珍しく買いの態度に出てしまった。


「あの野郎シめる!」


だが俺でなく倫に殺意の言葉を吐いた純は、俺の左脇を素り抜け早足で奥のコートに去って行った。

……相変わらずイイ性格してるぜ。

倫の言い忘れなんて日常茶飯事。

しかも俺の帰国が超気に入らないらしい。

俺は、心の中で見失った純の背中に中指を立て、ムカムカ倍増原因のコンタクトを外しに踵を返した。