いざ決戦の土曜日。

初めて純さんのお迎えで最後の外出へ。

元々マメではない上に基本土日祝日に予約殺到の純さんと、土日祝休みの私では休みが合わない。

土曜は、フットサルの為に夕方までが仕事。

でも今日は一日休みにしたそう。

午後からで良かったのに……なんてとても言えない。

ずっと車で二人きり禁止してたから久々に緊張……。

なぜなら車は、走る密室。

何度か押し倒されたりレジャーホテルに勝手に入って行くんだもの。


「休ませてごめんね」


「別に。……俺も放置で悪かった。俺だってお前ともっと出掛けたかったけど……」


左ハンドルの運転席からチラ見して物言いたげに黙り込んだ。

言いたいことはわかっている。

脳裏に半年前、夜に初プレデートで憧れのラグジュアリーホテルで待ち合わせた時のこと。

夜景の素敵なレストランで優雅に食事を期待していた私は、いきなりチェックインしようとする彼にびっくり!!

慌てて人気のない所に引っ張り問い詰めると、涼しげな顔で言ってのけた。


『お前レジャーホテル嫌がりそうじゃん。俺は、嫌いじゃないけど』


まるで私の為にわざわざラグジュアリーホテルに来てやったと言わんばかりの言い草に、超唖然として言葉を失った。


『レジャーのが良いなら出るか?』


普通に付き合ってても初デートでいきなりホテル直行なんて有り得ない!

私は、まるで宇宙存在に遭遇した気分で彼を見上げ続けた。

そして自分の決断に深海よりも深く後悔し、やはりこの人とは無理! と強く悟ったのだった。


『信じられない! 私を本気で好きとか言って結局体目当て?』


怒りや悔しさやら色々な感情を必死に抑えながらも珍しく感情的になってしまった。

純さんの過去を全て水に流し向き合おうと決心していた私は、完全に裏切られた思いで一杯でいた。


『は!? 寝ぼけてんじゃねーよ。だったらお前と付き合うかよ! 今だってお前よか超イイ体の女とヤリ放題出来るっつーのに、全部切ってお前選んでんだ。お前に告ってからずっとシてねーしどんだけ俺が我慢してるか……。けどお前以外シたくない。言っとくけど俺は、お前と会う度にシたいからな』


信じられない酷い言い草に呆れ果て、もう完全に言葉を失った。

どうせ私は、貧弱な体よ。

でも怖いほど真顔で私だけとシたい宣言に、女の求められる快感を刺激され少しだけ嬉しくもあった。

でも私は、大好きな人と付き合い始めてもすぐに体の関係持つのは嫌、信頼関係を築いてからがいい。

例え古い、重いと言われてもそれが私。

純さんとは、まだ恋が目吹いたばかりでゆっくり進みたいと正直に心を打ち明けた。


『俺は、無理! お前といればシたくなる』

『いい大人が、体の関係なしなんて有り得ねー』

『男と女は、スる度に理解するもんだ』


でも平行線辿るばかり。

私だって彼氏となら体の関係も自然なことと理解してるし嫌と言ってる訳じゃない、時期尚早と言ってるの。

……私の恋愛偏差値が余りに低いだけ?

それでも譲れない。

最終的に破局だけは避けたかった純さんが、私の想いを尊重すると約束し、日向君言わく『奇跡の収束』を迎えた。

それ以降、健全なデートを重ねるも少しずつ会うまでの期間は長くなり、今日は一ヶ月半ぶりのお出掛けである。

結局、きちんと向き合わず終いに心残りと心苦しさを感じながら彼の隣に座っていた。

ふと気が付くといつの間にか高速で驚く。


「どこへ?」


「天気いいし海にドライブ。高速なら一時間弱」


振り向き様サイドの長めのウェーブヘアが揺れて色気を感じる笑みにドキッとした。