その後、二時間の練習を終え、日向君のお父さんのカフェ&バーReiに移動した。

土曜の夜は、毎週のようにここの二階で夕食を取っている。

店内は、オレンジの柔らかな照明が心地良く、皆すっかりオーナーとも顔馴染みで気兼ねなく長居出来て居心地が良い。

この店は、数々のカクテルコンクールで受賞経歴のあるバーテンダーが作るカクテルが大人気で、私は、新鮮で彩り鮮やかな自家栽培野菜のボリュームサラダが大好き。

玲と定番の一番奥の広いテーブルを囲むU字型の茶色のソファーに着席すると、珍しく純さんが左隣に来た。

……もしや返事の催促?

一気に緊張が高まるが、彼は素知らぬ顔であなたと着席し、その隣に日向君が座った。

彼らの向かいには、他のメンバー三人が座り、それ以外の席は主に女好きメンバーがファンの子達と合コン状態になっていて、時に座れない子達も出る。

料理を注文し終えると、新メンバー藤井君への質問が始まった。

あなたが、簡単な自己紹介を終えると、隣の席から『彼女は?』の声に女性陣の視線が一斉集中した。


「NO」


女性陣は、一気にテンション爆上がりで室内の熱気が上昇したように感じられた。


「マジ~!? 強烈ライバル登場かよ! 凌君は、どんな子がお好み? 巨乳イテッ! 玲ちゃんもっと~」


「相変わらずキモっ!」


メンバー1のチャラ男が、早速下ネタ突入、隣の玲におでこを叩かれ爆笑を巻き起こした。


「で?」


「……笑顔と性格が、可愛い子かな。色で例えるならパステル」


あなたの返事に、純さんは溜息を吐いて口を開いた。


「変わってねーな。パッキン美女の一人も連れて来れなかったんかよ?」


「俺は、仕事で行ってたの。それに彼女は、日本人がいい」


あらあら耳をダンボにしていた女性陣の眼がキラリンと輝いた。


「どーでもいいけど、かおりに手出すなよ」


純さんは、私を抱き寄せながらあなたに牽制し、メンバー達から冷やかし声が上がった。

私は、初めて牽制されたことに驚きながら素早く離れた。

何よりあなたに見られたくなかった。


「へ~純に独占欲……成長したな~」


「てめぇ……」


しみじみと言うあなたに、純さんの眼から"怒"の文字が連打された。


「純の奴、昔から凌にライバル心メラメラで純はキング、凌はプリンスって女子に呼ばれてたって。キング VS プリンスの女ゲット対決観たい! かおりパステルっぽいし凌惚れてくんないかな?」