そして夏休みが来たが、僕は会いに行かなかった。
忘れたわけでも、気持ちがなくなったわけでもない

3月、卒業してからあの都会へ引っ越す準備をしていたからいけなかった。
毎日アルバイトで家賃を稼ぎ、就活生だったからだ

そして月日は流れ僕はあの都会に家を借りた。

高校生からの2年間は顔つきも変わるものだ。
それに世は感染症対策でマスクだらけになっていた。

18になった僕は都会の家についた。
荷物をおいてすぐに家を出た
あのバーを探しに。

感染症対策で閉まっていないか。
そもそもまだやっているのか。
心配だった

都会から少し離れ細道に入ったところにその店はちゃんとあった
そして看板にはOPENの文字。
入口の手前で足が一瞬止まった

マスクもしているし、就活で髪も整えてあり、あの頃のボサボサとは違う。
あの時はお姉さんのほうが大きかった背も同じくらいにはなっている。
僕だって気づいてもらえるかな?

ドキドキしながら扉を開ける
そこには青い髪の綺麗なあのお姉さんがいた。

「いらっしゃいませ。カウンターどうぞ」
僕だと気づいていない様子で案内される。

「こんな分かりづらい場所なのによく見つけましたね」

「あぁ、たまたま目に入ってね。」

「何飲まれます?」

「あ、おすすめで」
まだ未成年のくせにおすすめを頼んでしまった。
中々僕だって言い出せなかった。
そういえば名前も教えてなかったしなぁ、
お姉さんの名前もわからない。

お姉さんは飲み物を入れながら話し始めた
「昔ね、私の事を好いてくれてたガキンチョ
がいてねー、地元に帰るからって電話番号をくれてお別れしたんですよ」

ドンッ

目の前にコーヒーが置かれた

「かけたら違うところに繋がったけどね」

5秒の沈黙の後口を開いたのはお姉さんだった
「いつまで待たせんのよ。夏休みも来ないし」

二人の目には自然と涙が浮かんでいた

あのとき飲めなかったコーヒーも普通に飲めた。
「私今日誕生日なの。最高のプレゼントをありがとう」
僕の記憶がグルグルと回る
祝われることもなかったから忘れていた
「僕も今日誕生日だ…」
お互いにお互いが最高のプレゼントとなった。

結局家は解約してあの家で二人で住み始めた。
綺麗な青い君と。