ゆっくりと意識が浮上する。真っ白い天井が眩しくて、一瞬だけ顔を顰めた。
ここは、保健室…?

「あ、起きた?良かった〜。みんな心配してたよ?」
「まみや、くん…」
「もうすぐ桜庭さんが荷物もってきてくれるよ。熱高いから、早退だって。はい、お水飲んでね。」

コップを持つ手に、そっと真宮くんの手が添えられる。こういうところで気配りができるからモテるんだろうな、なんて場違いなことを考えていたら、真宮くんがありえないことを口にした。

「…樹がね、運んでくれたんだよ。」
「え」
「びっくりした?でも、樹はもともとそういうやつだから。守りたいもののために、あいつなりに考えてるんだ。…だからって、好きな子傷つけてたら元も子もないのにね」

真宮くんの言っていることが理解できないのは、きっと熱のせいだけじゃないと思う。
瀬名くんは私のことが嫌いなんじゃなかったの?
運んでくれたのは、どうして?
守りたいものって、なに?
好きな子って、だれ?
そう思うのに、聞けなかった。聞いちゃいけないことのような気がして、何も言えずに俯く。

そんな空気の中、やがて莉世がきて、私が目を覚ましたことに気がつくとベットに駆け寄ってきた。病人なんだから、と真宮くんが宥めるのも聞かずに、莉世は私に抱きつく。

「ほんっとに、ちょーー心配したんだからね!?倒れる前に言いなって言った直後に倒れる?普通!」
「ごめんって…。鞄、持ってきてくれてありがとね。」
「いいってことよ!」

莉世と真宮くんが午後の授業に戻っていくのを見届けてから約20分後、私はお母さんが迎えに来てくれた車に乗って家に帰った。