「んで、これからどうしたらいいと思う?」

「とりあえず、全二十枚を洗い直して何かしらのヒントを探す。」

 僕はそう提案した。僕には他に手立てが無いと思っていた。時間も残されていないし、早く行動に移す必要があった。

「そうと決まったら、行くぞ。」

 僕は紗南にそう言った。

 もう少し、僕の言動に疑いの目を向けて欲しかった。

 二人が道を踏み外すように僕が発言したら、もう修正は不可能である。老後に詐欺被害に遭うようなものだ。

 僕はそう考えながら、紗南との会話に対して、懐かしさを噛みしめていた。

その時だった。

「アア…………‼ アア‼」

 僕と紗南は、昇降口の少し行った辺りの廊下で話していたのだが、司令官は本部に残っているようで、その方角から低いうめき声が聞こえて来た。

「ねえ、これって……。」

「司令官のだよな……。やばいぞ‼」

 走る速度を上げて、声の発信場所へ急行する。

 死ぬなよ。

 お前が死んだら僕がここまでやった意味が無いんだからな……。

 絶対死ぬなよ。

 そう心の中で叫びながら、僕は走った。

 「お……お帰り……。」

 司令官の声はかすれていて、僕は司令官の体の状態が何となく想像できた。

「どうしたんだ、今の声は。」

 僕が言うと、司令官は新規三枚のメモを右手で掲げた。

「これを見てたら急に頭痛が来てな……。あっ痛ててて……。」

 司令官は頭を押さえながら寝転がっていた。余りの痛みに、こうしていないと耐えられなかったのだろう。

 僕は、司令官から三枚のメモを受け取り、改めて眺めた。

 僕は、既に記憶の靄が無くなっていた。だから頭痛が訪れない事も分かっていた。