しかし、残りの二人がそれを許してくれなかった。
「言っとくけど、もう一人で行動させないからね。必ず私か司令官が見張りで、真道の行動を監視するから。でなきゃ、また一人で突っ走りそうだから。」

「そんな事、もうしないよ。」

「本当かなー。もう、信用できない。」

紗南の言う通りだ。

 自分が口酸っぱく言ってきた、『単独行動禁止』を自ら破ったのだ。

 だから、彼らの信頼度が低下するのは至極当然だった。

 もう単独行動はとらない、それは心に誓う。でも三人で必ず帰還するという約束は守れそうにはなかった。

「これから、とことん見張ってくれよ。」
「言われなくてもそうする。じゃなきゃ、私たちの気が済まない。」

 紗南はそう言うと僕の隣に立ち、近い距離間のまま会議を進めた。

「ありがとな。」

 僕の言葉は、会話の流れ的に違和感があるかもしれない。

 それでも僕の口から出てしまったのは、僕の心に感謝の気持ちが溢れていたからだった。

「どうしたの? 急に。」

 紗南は若干、僕の発言に引いたような表情を浮かべた。

 しかし、僕はそんなことお構いなしに、ありのままの気持ちを紗南に話した。

「諦めないでくれて、見捨てないでくれて。僕は本当に感謝してるんだ。」

 僕の発言を表面的に切り取ってみると、裏切りを働いた、ウザい系登場人物だっただろう。

 現に紗南の目に涙が浮かんでいた。

 いくら器の大きい人でも、僕の発した言動は容認できない部類の行為だった。

「まあ、真道の事、何となくだけどさ、分かってたからだと思う。日数が浅いうちは、流石に手が出てたよ。」

 紗南はにこやか答えた。

 紗南の気持ちはもっともで、相手の内側を知らない状態の中、あんな腹立たしさを煽るような言葉を、浴びせられたら誰だって怒るだろう。

 自分に置き換えて考えると、もしかしたら会話すらやめてしまう恐れもあった。

「それでも、嫌いにはなっただろ?」

「どうかな……? あんまり嫌って無かったと思うけど……。でも凄い怖かった。あんな無表情で、狂った事言ってくるんだもん。」

 まあ、意識してやってたし。

 第一、紗南と司令官から見放されてしまえば、僕の勝ちだと思ってたからな。

 そりゃ、あれだけの演技は必要だったんだよね。

 それが僕の考えだった。

 この基地に戻る間、僕は自分の計画がどうしたら成功するのかを考えた。

 そして結果が、この大失敗につながった。