僕らは運命の意味を探していた。

 僕は本題路線に戻して話を続けた。僕の言葉に反応した紗南は、窓の外を見ながら言った。

「真道なんだかんだ、あきの事ちゃんと見てたんだね。あきね、よく言ってたよ。『自分の持った印象以外は信用しない』って。」

 僕は得意げな顔を紗南に見せて、自己満足に浸った。

 紗南は僕の顔を見ると、『腹立つな、その顔。』と言いながら僕の肩を殴った。

 子供が人を殴るような力で、二回三回と叩いてきた。

「春原真道という男子は、櫻子あきという女子からすると、かけがえのない自分だけのヒーローだったみたいだね。真道たちに比べたら、私なんかは、短い期間しか行動を共にしていないけど、何となくあきからそれを感じたよ。」

 紗南は少し嬉しそうな顔で話した。しかし紗南の想いとは裏腹に、僕は複雑な想いを抱いていた。

「ヒーローになんかなれっこないよ。僕はあきの死ぬ原因を作った、最低な幼馴染だ。その事実は変わりない。」

 僕は最愛の人物を死なせてしまった。はっきり言って害悪ポジ。そんな人間がヒーローを名乗れるはずがない。

「真道がどう思うのかなんて、あの子には何の意味も無いよ。自分がどう思うしか眼中にないんだからさ。」

「紗南…………。」

「中学時代がどうだったとか、こんな事言われてとか、真道が感じた今までの立場と、周りからの罵詈雑言なんて、あの子からしたら何の意味も持たないからね。ただの背景音の一つに過ぎないんだよ。」

 良く言っているのか、悪口なのか、僕には分からない。

 でも、どちらにせよ、僕がいくら悩んだって、それが無意味に終わってしまう。それが言いたかったのだと思った。

「背景音か……。結構辛かったし、悩んだんだけどな……。」

「まあまあ。あきは、そういう人間なんだから仕方ないって。」

 自分で決めた事を曲げずに生きる。

 僕はあきの生き様を感じて、更に悔しさが溢れてきた。

 僕なんかより人生を楽しんでいて、『人の役に立ちたい』という立派な夢を持っている。

 そんな自分の将来を夢見て、幸せな未来を描いた一人の少女の一生を台無しにしてしまった。

 その罪の重さは計り知れないだろう。

 しかし、そろそろ整理を付けなければならない。

 いつまでも引きずっていれば、紗南や司令官に、面倒な重りを背負わせ続けることになりかねなかった。

 もう過去と向き合う事を辞める頃合いなのである。

 今、危険を冒す人間は僕だけで十分。二人を元の世界に返せられれば、僕は後腐れなくこの世を去れる。