「……なんで、まだ生きてるんだよ。」

 創造者はまだこの苦痛を感じて生きろ、と言っているようで体の調子に何ら変化は無かった。

「真道か。よかった目が覚めたんだな。」

「司令官が、気絶させたくせに何言ってんの……。」

 二人の声色と温度がどこか懐かしい。でも自然と参加したいとは思わなかった。

「…………泣け。」

 微かな声は唐突に僕の耳に届いた。その声を聞き逃さなかった。

 右手で、目を覆うような形をとっているからか、聴覚が敏感なのかもしれない。

 覆い隠す目元から、濡れていく感触と悲しげな温かさを感じた。

 とめどなく流れる想いの片鱗を、僕は制御することが出来なかった。

「……今は、好きなだけ泣け、……堪えるな。抗うな。感じるな。無心で、本能の赴くままに感情を爆発させろ。」

 司令官はしゃがみ込むと、僕の胸に手を乗せて、穏やかに言った。

 彼は気遣いで言ってくれているのだろう。僕もそれは分かっていた。分かっていたけど、その優しさを素直に受け入れられない自分がいた。

「……黙れよ‼ 無責任な事言うな‼ 関係ないからって何言っても良いと思うなよ……‼」

 僕は彼の発言が無責任すぎると感じてしまった。

 何も知らない上に、いっちょ前にカッコつけて、それっぽい事を傷心の僕に声を掛ける。

 優しさだと分かっていても、無意識に跳ね返してしまった。

「お、おう……。」

 司令官は、僕の勢いに圧倒されたらしい。

 肩身を狭めて、声もしおらしくなっていた。

 ごめん、二人がこの状況に困惑しているのは、分かっているんだよ。

 こんな僕を見てこなかったから、扱いに手間取っているんだと思うんだ。

 だからこそ、今は何も言葉を掛けないで欲しい。

 傷ついた心に沁みるような優しい言葉を貰っても、攻撃するしか、今の僕には出来そうになかったんだもの。

 そうやって心の中で理由付けをするけれど、やはり言葉に出した罪悪感がぬぐえない。

 しかも必要以上の声量で発した怒鳴り声は、二人の心に傷を付けてしまうのに、充分な効力があったと思う。