僕らは運命の意味を探していた。

 でも、俺はそうは思わなかった。どうしてもそう思えなかった。なぜなら俺らに見せた姿が、あんなにも幸福で包まれているようだったから。

「それもありますけど……。その子は生前、どんな様子だったんですか?」

「さっきも言った通りだよ……。最高の仲間に恵まれて………………そうか。」

 俺の言いたかったことが伝わったのだろう。先生の表情が少し柔らかくなったような気がした。

「私は、あの子を悲劇の主人公に、したかったのかもしれないね……。」

「先生……。」

「あの子は喜劇の主人公で、オチがバットエンドだったってだけなんだね……。私の考えが間違ってたみたいだ。」

 やはり彼も医者。頭が柔らかいようで、すぐに俺の意図を汲んでくれた。

 しかも社会人らしい器の大きさで、生意気な俺に対しても誠実に謝罪してくれた。先生は全く悪い事をしていないはずなのに。

 それから少しだけ雰囲気が明るくなると、世間話を少し交わして、俺らは帰路につくことにした。

 「じゃあ、また明日も来ますね。」

「うん、気を付けて帰ってよ。」

「はい。じゃあまた。」

 俺は少し笑顔を綻ばせながら、病室を後にした。