「やっぱり、僕の考えが足りていなかったからだよ……。もう少し彼の気持ちにより添えてあげていれば、こうはならなかったんだ……。」
そう言った僕は、俯いたまま足元にある黒い渦を見つめていた。
「マー君、駄目だって、そんな事……。お願い目を覚まして、マー君てば……。」
「ごめん……。僕にはもう抗う力が残っていないんだ。だから、後は任せたよ……。」
徐々に、僕の足が呑み込まれていく。
つま先から、くるぶし、脛ときて、腿に来た辺りまで黒い渦の中に取り込まれていた。
このまま順当に行けば、腰から首、最後に髪の毛の先まで飲み込まれて、そして長くて苦しい茨の道から外れることが出来そうだ。
もう、十分生きたんじゃないのか…………。
体を脱力させ、僕は飲み込まれるのを今か今かと待っていた。
あきだろうか、僕の腕に掴まれているような感覚を覚えた。
そんな事をしても無駄だ。
そう言おうとした瞬間、何か凄まじい力で引っ張り上げられた。
動揺する僕をよそに、あきは清々しい様子で渦の中にいた。僕と同様、順々にあきの体は吸い込まれていった。
「ここは私が犠牲になるから、ね。君はあの二人をよろしく……。絶対脱出させてよ。大好きだよ、マー君…………。」
バイバイ………………。
あきは僕の身代わりとなり、絶望の渦に呑み込まれていった。
作りだした僕ではなく、とばっちりのあきが犠牲になるという、最悪の結果を招いてしまった。
あきは、吞み込まれる恐怖を隠しながら、終始笑顔で僕の顔を見ていた。多分、彼女なりの配慮なのだろう。
『私の事なんか気にしないで』というメッセージ性の強い表情を浮かべているように見えた。
最期の瞬間、僕は見ている事しか出来なかった。
あきが僕を引き上げてくれたのにも関わらず、その拍子に彼女が渦に落ちて、僕は彼女を見殺しにしてしまった。
手の指し伸ばしようはいくらでもあった。
しかし、あの日の僕と同じく、体が石のように硬直して全く動かなかった。そんな軟弱な僕の心が、憎くて仕方なかった。
そう言った僕は、俯いたまま足元にある黒い渦を見つめていた。
「マー君、駄目だって、そんな事……。お願い目を覚まして、マー君てば……。」
「ごめん……。僕にはもう抗う力が残っていないんだ。だから、後は任せたよ……。」
徐々に、僕の足が呑み込まれていく。
つま先から、くるぶし、脛ときて、腿に来た辺りまで黒い渦の中に取り込まれていた。
このまま順当に行けば、腰から首、最後に髪の毛の先まで飲み込まれて、そして長くて苦しい茨の道から外れることが出来そうだ。
もう、十分生きたんじゃないのか…………。
体を脱力させ、僕は飲み込まれるのを今か今かと待っていた。
あきだろうか、僕の腕に掴まれているような感覚を覚えた。
そんな事をしても無駄だ。
そう言おうとした瞬間、何か凄まじい力で引っ張り上げられた。
動揺する僕をよそに、あきは清々しい様子で渦の中にいた。僕と同様、順々にあきの体は吸い込まれていった。
「ここは私が犠牲になるから、ね。君はあの二人をよろしく……。絶対脱出させてよ。大好きだよ、マー君…………。」
バイバイ………………。
あきは僕の身代わりとなり、絶望の渦に呑み込まれていった。
作りだした僕ではなく、とばっちりのあきが犠牲になるという、最悪の結果を招いてしまった。
あきは、吞み込まれる恐怖を隠しながら、終始笑顔で僕の顔を見ていた。多分、彼女なりの配慮なのだろう。
『私の事なんか気にしないで』というメッセージ性の強い表情を浮かべているように見えた。
最期の瞬間、僕は見ている事しか出来なかった。
あきが僕を引き上げてくれたのにも関わらず、その拍子に彼女が渦に落ちて、僕は彼女を見殺しにしてしまった。
手の指し伸ばしようはいくらでもあった。
しかし、あの日の僕と同じく、体が石のように硬直して全く動かなかった。そんな軟弱な僕の心が、憎くて仕方なかった。
