僕らは運命の意味を探していた。

「じゃあ、君だったら、『もし誰かが自殺しようとしている。いじめが原因で。その時君ならどうする?』って質問に対してなんて答えてた?」

「多分、マー君と同じことを言ってたと思うよ。」

 あきの言葉が嘘か本当かなんて、僕が知る範疇に無い。励ますために嘘を付いてくれた可能性だって十分にあるし、本心で言ったことかもしれない。

 なんせ僕には知りようがなかった。

「全力で止めるよ。何が何でもな。」

 それが僕の答えだった。

 僕の言動は、自殺願望のある人を止めた行為、という見方になるだろう。事実、その目的で言葉を発した訳だからあながち間違ってはいない。

 しかし箱を開けた時に、僕はその返答を後悔した。

 何度も僕はアツから聞き返された、『本気で言ってる?』と。もちろん本気だと、何度も言った。

 僕は偽善者だった。自己満を満たすために、その人を利用する行為に走ってしまった。

 偽善者? 

 これのどこがそうなの? 

 周りの人からは、何度もそう聞かれた。

 でも僕の心は揺らがなかった。

 自分は偽善者になり、人を殺したという解釈を捨てることは無かった。

 何が間違っていたか? 

 それは、僕の返答が無責任すぎたことだ。受けている側に非が無いいじめというのは、どれだけ強固な素材で出来たハートでさえ、いとも簡単に木端微塵にしてしまう。

 それだけの破壊力持っているのだ。

 そんな抜群の破壊力を持つ攻撃を食らい、本人は追い込まれながらも、様々な事を考えていただろう。

 『どうやったら、仕返しが出来るか』

 『どうしたら、この辛い日々から脱却できるか』

 『どうやったら、この日々を乗り越えられるか』と、永遠と探り続けていた。

 もしかすると、『どうやったら楽に天国に行けるか』なんて事まで考えていたかもしれない。

 僕は、分かっていなかったのだと思う。アツがどれほど苦しんで来たのか、その苦悩がどれほどのものなのか。

 精神障害を患っていたアツは、既に正常な判断が出来る状態では無かった。

 恐らく末期の状態だったからだと思われるが、それでも学校に登校はしていた。

 出席日数のギリギリのラインで、何とか昇級を果たし、留年することなく学校生活を営んで来た。

 アツの精神障害の症状が現れるのも時々で、しかも誰かの迷惑なるようなことは無かった。

 それが学校生活を営めた大きな要因だったのだと、僕は思っている。

 クラスでも面白キャラで、登校日数が少ないのにも拘わらず、クラスの人気者となった。

 そんな彼が、突然事故に遭い、亡くなった。

 聞けば、精神障害の影響で、集中力が散漫になっていたから、走ってくる車に気付かなかったそうだ。

 その事故の直前に、僕とアツは教室で大喧嘩をしていた。今あきと話している内容が、まさにそれだった。

 元々病気で集中力が持たない上に、頭に血が上った状態で下校をすれば、結果は自ずと見えてくるだろう。