「君たちはこんな環境で寝てるんだ。なんて可哀そうな人たちなんだろうか。」

「なっ……‼」

「起きてたんだね。」

 知っていてわざと、知らないふりをするところが、また鼻につく。

「で、何の用なんだ。寝たいから明日にして欲しいんだけど……。」

「十二の紙、あれの事について知りたくは無いかな?」

「何⁉ ぜひ知りたい。」

「あきさんも寝ている事だし、良いかな君になら。」

 やったぞ、これで一歩前進する。明日には、良い報告が出来そうだ。

「でも、その前に、君が分かった事について教えてくれないかな。十六日という期間を過ごしてきて、君がどう感じ、どう考えたのか。私に聞かせて欲しいんだ。」

「はあ……。これも、情報のためだよな。分かったよ、全部話すよ。その代わり、約束は守れよ。」

「ああ、もちろんだとも。」

 その言葉尻からは、どこか含みのある言い方のようだった。

 しかし今は、あれこれ構っている場合ではない。とりあえず、洗いざらい全部話すとしよう。

 「…………って、ところかな。これで満足?」

「まあまあってところかな。これだけの情報量で、このレベルまで来ているとは思わなかったけど、……やっぱり足りないな。」

「足りないって、何が足りないんだよ。」

「んー、詰めが甘いというか、調べきれてないというか……。」

「もう、隠している事は無いからな。」

「ああ、分かっているとも。君の考えている事くらい分かってるからね。」

 じゃあ、なんでわざわざ言わせたんだよ。

 別に僕の考えを読み取ってくれればよかったのに。

「そこは何となくだよ。読み取るだけじゃ、面白くないからね。」

 じゃあ、なんで今のは読み取ったんだよ。

 言葉を発しなくとも、会話できている違和感が、僕にとって凄く気持ちが悪かった。

「はあ……。とりあえず、約束は果たしてもらうぞ。」

「勿論だとも。まずは、十二の紙を私に。」

「いいけど、破ったりなんかするなよな。」

 僕はそう言うと、ゲームマスターは『する訳ないだろう。』と人を馬鹿にするように笑った。

 僕はゲームマスターが差しだした右手にその紙を乗せ、次なる行動を待っていた。

 「はい、これで見れるはずだ。」
「ん。どれどれ……。」

 三月二十九日、受験も終わり、何とか遠くの高校に受かった。

 あいつとは別だが何とか上手くやっていこうと思う。か・・・・・・。

「そろそろかな……。」


 ゲームマスターは、全てを見通したような口調で言った。

「……ああ、その通りだよ。」

 そしてその言葉通り、徐々にあの割れるような頭痛が広がっていった。しかも、マスターが言ってから数秒後に。

 「まさかとは思うけど……、これって、お前が仕掛けてるわけじゃないよな……。」

「それに関しては、神に誓って何もしていない。」

 本当かどうかの信憑性を問い詰める前に、どうにかして頭痛を止める必要があった。

 自分が優位な立場につくのはその後だ。

「本当に、何も、してない、だろう、な……。」

「ああ、ノータッチだ。」

 意識が朦朧としてきた……。

 ヤバい、視界がぼやけて、意識が遠の……く。

 僕はそこで力尽き、その場に倒れこんだ。
「せいぜい足掻いてくださいね、真道君……、ふふふ……。」

 ゲームマスターは、そう見下したような言葉を残すと、例の如く霧のように消えて無くなった。

 勿論僕の耳にゲームマスターの声は届いていなかった。