僕らは運命の意味を探していた。

「そろそろ戻ろっか。」

「そうだな。あの二人の事も気になるし。」

 僕らは腰を上げると、二人横並んで教室に帰っていった。

 その間も、紗夜の黄色い笑い声が校舎に響き渡っていたのは、言うまでもない事だった。

 「とりあえず、そんな所じゃないか。」

「ああ。そう言う事で、午後から活動を再開するから、準備よろしくな‼」

 僕は、司令官がいつもの調子を取り戻したような気がして、少しだけ安堵感を感じた。

「ごめんね、迷惑掛けちゃって。」

 彼女は下を向いたまま、一向に顔を上げてくれなかった。やはり気持ちの整理は、簡単に付くものでは無いらしい。

「別に、それは大丈夫なんだけどさ。」

 僕は一間開けて、言葉を紡ぎなおした。

「一人で抱え込むなよ。」

「えっ…………?」

「昨日からずっと泣いてばかりじゃないのか? 人に話した方がすっきりする場合だってあるんだから、遠慮なく周りを頼れよ。」

 俯いたままのあきが、ようやく僕の顔を見てくれた。

 目は赤く腫れて、涙で濡れた顔が真っすぐ僕の目に飛び込んでくる。それは苦しんで悩みぬいた、一人の少女の戦った証なのだろう。

 あきは、ゆっくりと首を縦に動かすと、少しばかり口を動かして、僕に気持ちを伝えてくれた。

「時々だけどね、話してたの。他愛も無い世間話だけどね。周りには誰もいないくて、二人っきりで。私はその場にいれた事がまず嬉しかった。私を受け入れてくれたんだって思えたから、ホントに嬉しかったの。いろんな話をしてくれたことも嬉しかった。あんまり話せなかったから、深い関係にはなれなかったけど、もっと彼女の事知りたかったよ……。」

 恐らく、現実世界で出会っていたとしたら、長い付き合いになった二人なのだろう。

 短期間でも世間話を交わし、お互いがお互いを知ろうとしていた。少なくともあきにはその気持ちが大きかった。

 二人がどんな内容で盛り上がったのかは、分からないし、聞く気も無い。

 だってそんな素敵な関係だった二人は、将来長きにわたって友人関係を結び続けたことは、間違いないのだから。
 僕が入ることで邪魔にしかならないのだろう。

「でも、やっぱりあのお別れの仕方は、辛かったよ……。」

 僕ら三人も、多分友花自身もこれほどまでに、あきが好いていた事を知らなかった。

 だからあの言い争ってしまった場面では、あきは泣きたいのを我慢して本音で話したのだろう。

 あの場で僕が、誰かの力になれることは無かった。その結論は今もなお変わっていない。僕は自身の無力さを痛感した。