僕の頭は錯乱状態にあった。考えが揺れ動き、まとまる気配がまるでなかった。
「何がきっかけで、そうなったんだ。」
「敦君の事故が原因だったよ……。」
敦君?
駄目だ思い出せない。敦……敦……あつ、し…………。
「アァ……‼ 頭が……割れ……る……。」
「マー君? マー君、大丈夫? マー君。」
あきはうずくまりのたうち回る僕を、心配そうに見つめていた。
敦、いやアツ。
唯一無二の友達で、ムードメーカーだった陽気な男子。
「そうだ、思い出した……。アツは僕の親友だったんだよ……。」
僕は、ふと思い出したことを口に出していた。懐かしく少し切ない、どこか昔話を見ているかのように、自分の記憶に浸っていた。
「マー君、大丈夫?」
「ああ……。大丈夫だよ。ごめんな心配かけて……。」
「それは良いけど、本当に大丈夫? 顔色悪いよ?」
だろうな……、頭が割れたんじゃないかってくらいの激痛が走ってるから・・・・・・。
「いつかに僕があきにさ、聞いたよね。酷い行いをしたことあるかって。」
僕は話しながら、断片的に戻った記憶を遡り、自分の行動を垣間見ていた。
その中に、なぜか床を何度も殴りつける僕がいた。
何があったかまでは思い出せなかったが、床に落ちた涙の跡がすぐそこにあって、後悔の念を叫ぶ僕の声が虚しく自室に響いていた。
「僕に気を使ってくれたんだよな。」
僕は真っすぐあきを見て言った。しかし俯き涙を流す彼女は、なぜか首を振って僕の問いに答えていた。
「気なんか使ってないよ……。私がマー君の悲しむ顔が見たくなかっただけなの……。」
彼女の悲鳴は痛みの和らぎ始めた頭に響いた。それは多分、決して大きくない心の奥から湧き出た本物の感情だった。
「いいや違くなんかない。やっぱり思った通りの優しい行動なんだ、あきが僕のために選択してくれたそれは。」
「違うの……本当に違うの。私が私利私欲のために取った選択なの……。」
苦しんでいたのだろう。僕が記憶を無くしてからずっと。
僕の記憶が戻れば、全員脱出できる可能性が高くなる。みんなの利益にも繋がるだろう。
でも僕の苦しむ顔を見たくなかったから、あきは今日まで言えずにいたのだと思う。
だから、自然に身を任せたのだ。あき自身で僕の頭痛の引き金を引きたくなかったから。
これを僕は彼女の「私利私欲」だなんて思える筈がなかった。
「じゃあさ、なんでその私利私欲の選択で、心が満たされる人間がいるんだと思う?」
「えっ……?」
やっと彼女は顔を上げてくれた。涙で顔を濡らし、苦しんだ証を全面に表したその表情をそのまま、僕に見せてくれた。
「君のとった行動が正しいからだよ。君が取った行動は決して自分のためなんかじゃない。その行動を取てる人間は、人の事を考えれる人間にしか決断できないんだ。」
そして僕はいっぱいに白い歯を見せ、ありったけの笑みを浮かべた。
「何がきっかけで、そうなったんだ。」
「敦君の事故が原因だったよ……。」
敦君?
駄目だ思い出せない。敦……敦……あつ、し…………。
「アァ……‼ 頭が……割れ……る……。」
「マー君? マー君、大丈夫? マー君。」
あきはうずくまりのたうち回る僕を、心配そうに見つめていた。
敦、いやアツ。
唯一無二の友達で、ムードメーカーだった陽気な男子。
「そうだ、思い出した……。アツは僕の親友だったんだよ……。」
僕は、ふと思い出したことを口に出していた。懐かしく少し切ない、どこか昔話を見ているかのように、自分の記憶に浸っていた。
「マー君、大丈夫?」
「ああ……。大丈夫だよ。ごめんな心配かけて……。」
「それは良いけど、本当に大丈夫? 顔色悪いよ?」
だろうな……、頭が割れたんじゃないかってくらいの激痛が走ってるから・・・・・・。
「いつかに僕があきにさ、聞いたよね。酷い行いをしたことあるかって。」
僕は話しながら、断片的に戻った記憶を遡り、自分の行動を垣間見ていた。
その中に、なぜか床を何度も殴りつける僕がいた。
何があったかまでは思い出せなかったが、床に落ちた涙の跡がすぐそこにあって、後悔の念を叫ぶ僕の声が虚しく自室に響いていた。
「僕に気を使ってくれたんだよな。」
僕は真っすぐあきを見て言った。しかし俯き涙を流す彼女は、なぜか首を振って僕の問いに答えていた。
「気なんか使ってないよ……。私がマー君の悲しむ顔が見たくなかっただけなの……。」
彼女の悲鳴は痛みの和らぎ始めた頭に響いた。それは多分、決して大きくない心の奥から湧き出た本物の感情だった。
「いいや違くなんかない。やっぱり思った通りの優しい行動なんだ、あきが僕のために選択してくれたそれは。」
「違うの……本当に違うの。私が私利私欲のために取った選択なの……。」
苦しんでいたのだろう。僕が記憶を無くしてからずっと。
僕の記憶が戻れば、全員脱出できる可能性が高くなる。みんなの利益にも繋がるだろう。
でも僕の苦しむ顔を見たくなかったから、あきは今日まで言えずにいたのだと思う。
だから、自然に身を任せたのだ。あき自身で僕の頭痛の引き金を引きたくなかったから。
これを僕は彼女の「私利私欲」だなんて思える筈がなかった。
「じゃあさ、なんでその私利私欲の選択で、心が満たされる人間がいるんだと思う?」
「えっ……?」
やっと彼女は顔を上げてくれた。涙で顔を濡らし、苦しんだ証を全面に表したその表情をそのまま、僕に見せてくれた。
「君のとった行動が正しいからだよ。君が取った行動は決して自分のためなんかじゃない。その行動を取てる人間は、人の事を考えれる人間にしか決断できないんだ。」
そして僕はいっぱいに白い歯を見せ、ありったけの笑みを浮かべた。
