僕は、頑なに自分の凄さを認めないあきに苦笑しつつ、話題を変えた。

「現実世界で、僕らってどんな関係性だったの?」

 僕の問いに対して、浴衣姿の彼女の表情は少し曇っていた。

「私たちは、幼馴染みなんだ。保育園の時からずっと一緒だったよ。何をするのも、ずっと傍にはマー君がいたの。特別何があった訳でもないよ。私は、長い期間一緒にいて誰よりも信用してた。それは今も変わらないよ。でも……。」

 さっきまで輝いていた顔は、一段と増えた雨雲に覆いかぶさって、面影すら見えなくなってしまった。

「私ね、人となりを全て知っている、つもり、だったみたい……。」

「つもり……だった?」

 あきの発する言葉一つ一つがなぜか怖かった。多分だけどその正体はこれだったのだろう。

「うん……。あれは丁度一年前だった、私の大好きだった幼馴染が突然豹変してしまったのは・・・・・・。」

 髪留めも取れて、前髪で覆いかぶさった顔から零れ落ちる数多の大粒の涙。

 その一つ一つに感情が込められていたと考えると、僕の心は締め付けられたように苦しかった。

「いつも明るく笑顔で気配り上手だけど、鈍感でどこか抜けている君が、ある日を境に学校にも姿を現さなくなって……。来たと思ったら、誰とも話さず、話しかけても無言を貫いていたの……。」

「僕が……そんな事を……。」

「信じられないよね……。私だって信じられなかったもの。あの誰にでも優しいマー君が、いきなりクラスメイトの事を無視するなんて……。」

 あまりの衝撃に、僕は殴られたような感覚を覚えた。

 優しいかどうかは置いてといて、無視をする? 

 僕がか? 

 それを僕が選択したのか? 

 何のために? 

 というか、何か原因があったんじゃないのか?