そして、僕はその日、眠れずに一晩中起きていた。その間、僕は考え事をしていた。

 アツと一岡が言っていた『あれ』の件について、僕には気がかりな点があった。

 『あれ』とオブラートに包んで発言していたにも関わらず、何故か「心残りじゃない?」と問うてみるとあっさり認めてしまった。

 簡単に認めるくらいなら、いちいち他の言葉で置き換えたりしないはずだ。

 面白で僕を省く為にやったと考えるには、妙に現実味があった。

 恐らくだけど、「心残り」は僕に気付かれても問題ない事柄だった。

 しかし、それ以上の内容は、存命の僕が知っては行けない内容が含まれていた。僕はそう結論づけた。

 僕は、決して真実を知っているわけでは無い。

 というか、分からない方が身のためだと、僕は思っていた。

 僕はそこで考えるのを止め、冴えた目で満月の月を眺めていた。

 あの世界の月と、何ら変わりないはずなのに、僕は全く違うものを見ているような気分になっていた。

 そのまま僕は、一睡もせずに日の出を迎えた。

 翌日から、僕らに対して怒涛のお見舞いラッシュが始まった。

隼人、来海、一好君、奏さん、母さんなどなど。あらゆる方面の人たちが僕の部屋を訪れては、様々なリアクションを見せてくれた。

 特に大きなリアクションだったのは、隼人だった。

 最初に部屋に入ると、隼人は、腰ぬかすほど驚いていた。

 持ってきたお見舞い道具を部屋中にまき散らしたせいで、掃除するのがとても大変だった。

 そんな騒がしい雰囲気が一日中続き、夜を迎えた。お客さんも全員が帰宅したところで、ようやく一息つける時間がやって来た。