「ごめんね、突然お邪魔しちゃって」
「へーきへーき。今、お茶持ってくるから待ってて」

北条は國谷と柏木を自分の部屋に案内して、台所へ向かった

「…たしかに妹さんの仏壇はあったね」
「うん……」
「あの…」

2人が顔を上げると、中学の制服を着た男の子が立っていた

「あ、千里くんだよね…?私、柏木柚月。覚えてるかな…?」
「はい、姉がいつもお世話になってます。そちらの方は…」

柏木は不安に思った。前までは明るい子だったのに、どうしてこんなに律儀になったんだろう、と。

「俺は國谷朔弥。君のお姉さんの友達だよ」
「北条千里です。よろしくお願いします」
「…ねえ、千里くん。リオ、部活はやらないって言ってるの、なんでかわかる…?」
「……姉さんは、俺たちのことを守ろうとしてくれてるんです」
「守ろうとしてる?どういうこと?」

國谷は少し深入りして質問した

「…ここでは、話せません」
「…あのね、千里くん。私たちは、リオの力になりたいから、君に聞いてるんだ。ここじゃなくてもいいから、時間を作って、教えてくれないかな…?」
「…わかりました。俺も姉さんには、スポーツを続けてほしいですし」

案外あっさり、納得してくれた
この様子を見る限り、何かの罪滅ぼしをしているのだろうと、國谷は思った

「ほーい、お待たせー」
「あ、ありがとう、リオ」
「あれ?なんで千里がいんの?」
「ちょうど帰ってきたんだ」
「そっか。手を洗ってきなよ。テーブルの上にお菓子置いてあるから」
「ありがとう、姉さん。…じゃあ、失礼します」
「ん、ありがとね」

國谷は手をひらひらとしながら見送った
小さなテーブルに、お茶の入ったグラスが3つ並び、3人は勉強を始めた