放課後、柚月はいつも通り國谷のところに行き、サラは習い事へ行った

校門を抜けると、そこには見覚えのある奴がいた

「やあ、久しぶりだね。元ライバル」
「………」

私は逃げた

「なっ!?ちょ、待ってよ元ライバル!」

よく言うだろ?変なやつに会ったら、迷いなく逃げろって
だがアタシのことを“元ライバル”と呼ぶコイツは、どんなに逃げても追いかけてくる
体力がないくせに、力がないくせに、テクニックと粘り強さだけで、アタシを追い詰めてきた
いつも、アイツはそうだった

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…!」
「無理するからそうなるんだよ、バカ」
「キミがいきなり逃げ出すからだろ?それに、粘りとテクニックは私の性分なんだ。否定すると友達に嫌われるぞ、元ライバル」
「……何のようだ」
「単刀直入に言おう。元ライバル、お前のことをまたライバルと呼びたい」

それはつまり、「コートに戻ってこい」「またソフトテニスを始めろ」…そういうことを言いたいのだ

「無理だ」
「なぜ?もう怪我は治ったのだろう?」
「それでも、アタシは戻らない」
「なぜそう頑なになるんだ」
「お前に言う筋合いはないだろ」

私は歩き出した

「元ライバル、お前は何に恐れてる?」
「…!」

恐れる?このアタシが?

「…さぁな。アタシが知りたいくらいだ」

止まった足を、また動かした
知りたいとか言っておいて、私はいつも目を背ける
弱い奴がやる行動だ

いずれ時間が事実を教えてくれる
だけど時に、時間を待ちすぎて手遅れになることだってある

「元ライバル、これだけ言っておく」
「…」
「スポーツを嫌うな」