バスが出発してからも、國谷くんは来なかった
いや、来ないのはそうなんだけど、遅れてきたりしないのかなって、思ってたりした

けど……

「………」
「……だーもう!メシがまずくなる!!」
「り、リオちゃん…!」

怒ったリオを、宥めるサラ

「…柏木さん、ずっと國谷くんのこと気にしてるね」

神崎くんはカレーを食べながら私に聞いた

「うん……」
「ブスがもっとブスな面になってるぞ」

私にそう毒吐いてきたのは、岡本くんだった
リオは私のことを庇うように、岡本くんを睨みつける

「柚月に何も用がねーなら、こっちにくんじゃねぇ。虫唾が走る」
「不良は黙ってろ。柏木、お前あんな不登校のどこがいいんだ?ああ?」
「どこがいいとかじゃなくて、國谷くんは私の友達だよ。私にとって、大事な友達。誰かを見下したり、否定するようなことをしなくて、いつも同じ目線でいてくれる」

私はそう真剣に言った。岡本くんは「つまんねぇな…」と呟くと、コップに注がれていた水を私にかけてきた

「っ!」
「柚月ちゃん!!」
「柏木さん!」

サラと神崎くんが、私の元へ来てくれた

「テメェ、柚月が歯向かってくるからってンなことして許されると思ってんじゃねぇぞ!?あ"ぁ⁈」
「り、リオ!落ち着いて…」
「僕、先生呼んでくる!!」

神崎くんが先生を呼びに、私は怒ったリオを止めることしかできなかった

「誰かタオルを!柚月ちゃん、風邪ひいちゃうよ…」

サラがみんなにそう言ったけど、誰も、タオルなんか持ってきてくれなかった
むしろ、今の状況を面白がっている

「これだから庶民は汚いんだ。礼儀を知らない、態度も悪い、その上外見も内面もクソだ」

岡本くんの暴言は止まらなかった

「柏木、お前もお前だ。何不登校の不祥事やらかした人間と関わってんだ。そんなんだからいつまで経っても抜けてんだよ。あんな奴、来なくて正解だ。俺がハウスしてやったんだ、感謝しろよな」
「…え、待って………國谷くんに、何したの…?」
「そんなの、身分を解らせるために躾けてやっただ_」

岡本くんが言い終わる前に、私は手を出していた
ビンタを、していた

「………は?」
「………最低。最低だよ。これじゃあまるで、やってることが幼稚園児だよ」
「…お前、今誰に手を出したのかわかって」
「そろそろやめた方がいいよ。岡本くん」

先生を連れた神崎くんが、戻ってきた

「おい、これはどういうことだ…柏木、お前は体育着に着替えなさい」
「……」
「…行こ、柚月ちゃん…」

何も言わなかった私を、サラは優しく手を引いてくれた