野外体験当日、國谷くんは来なかった
バスが出発するギリギリまでの時間、私は校内を探し回った

教室、体育館、保健室

そして、屋上

「國谷くん!!」

どんなに大声で叫んでも、誰も、私の声には反応してくれない

約束したのに………

廊下をとぼとぼ歩いていると、保健の石川(いしかわ)先生に会った

「あら?柏木さんじゃない。どうしたの?」
「先生!國谷くん見ませんでしたか?!」
「國谷くん…?いいえ、今日は見てないけど…保健室にも来ていないみたいだし」
「…そう、ですか……」

落ち込んでいる私を見て、石川先生は、ある事を教えてくれた

「……ここだけの話ね」
「え?」
「2週間前、國谷くんのお家から連絡が入ったの。彼、帰ってくるのが遅かったみたいで」
「で、でもその日は委員の仕事があって_」

そう、2週間前は、國谷くんが勇気を出して授業に参加してくれた日

「多分、その後何かあったのでしょうね」
「……そんな……」

私は絶句した。だって、約束を…
いや、もしかしたら体調を崩してしまったのかもしれない。それなら、まだしも

「昨日まで、元気だったんです。國谷くん…」

私は意を決して、走り出した
だけど、石川先生に止められた

「ちょ、ちょっと!?どこ行くの?」
「國谷くんの家です!」
「あなたこれから野外体験でしょう?!」
「そうですけど!國谷くんがいなきゃ意味ないんです!」

何かあったのなら、私が力にならなきゃダメなのに

「柚月ー、もう出発しちゃうよ!」

と、リオが声をかけた

「でも…」
「柏木さん。柏木さんは、バスに乗っちゃいなさい」
「石川先生…」
「國谷くんの家には、先生から連絡してみるから。何か伝言とかはあるかしら」
「……でしたら」





ーバスー

「出発するぞー」

三上先生の合図で、運転手さんはバスを動かした

「………」

大丈夫だよね、國谷くん…