「言ってません、ってかやっぱり実乃梨先輩に呼ばれるの心地いいですね」

こうなったら形勢逆転


耳を赤くして恥ずかしがるような顔をする棗くんはもういない

私を顔から手を離し、意地悪く笑って見せた


「もう呼びませんっ」

「ならもう返事しないです」

「お好きにどうそっ」

「……………」


「むっ……」

「ははっ、なんですか、先輩が言ったんですよー」

「知らないですっ」


「ぁっ!時間っ、棗くんやばいよ!早く行こ!」


ふと、時計に目を向けたら、かなりギリギリだった

慌てて棗くんの手を引いて下駄箱へ


遅刻で頭がいっぱいだった私の後ろで

「っ……名前呼んでるし…」

なんて、呟いていたのはもちろん知らない