棗くんからは逃げられない

「っ…」
 
その声はもう起こっていない

それどころか喜んでいるように感じられた


「今、なんて言いました?」

「へ…?」

「今、」


「怒っ…?「その前」」


「っ……棗、くん…?………わっ!?」

その前、を口にすると掴まれていた腕をぐいと引き寄せられた


「やばっ…」

ふ…と吐かれた息が首にかかる


「んっ…」

「っ……」

「なんっ……」


思わず声を出した私にまたふっと息を吹きかけてきた

くすぐったすぎてしゃがみ込もうとするけどギュッと抱きしめられていて動けない