棗くんからは逃げられない

「なんでですか?」

「ひっ、人来るからっ…」

「……もう皆帰りましたよ?」

「うそっ……」


「だって、今日僕が片付け当番ですもん、皆着替えて帰りました」

「い、今横須賀くん出てったばっ……」

「片付け中にトンボに引っかかったんです、時間見てなかったんですか?」


指摘され、時計に目を向ける

少し薄暗い部室の時計は──部活が終わる時間を指していた


「なんっ…」

「よほど熱中していたんですね、来てください」

「は、はいぃ!?」


前後の文があっていない


「だって、人来ないからいいですよね?」

「そういう問題じゃ……っ!?」


ぐい、と腕をひかれ、視界が傾く