『それにね、唯織くんに彼女が出来て嬉しいじゃない。喜ぶべきことなのよ』


「それはものすごくわかってるよ…」



どんよりと言った私に、はぁ、とため息が返ってくる。



『じゃあ、いったい何が問題なの?』


「……嫌なの、」



これが私の本音だ。


───…唯織に彼女が出来るのは嫌。



『それはただのワガママよ。あんたは彼女じゃないんだから』


「それもものすごく分かってるよ…!」


ねーちゃんにも絶対的な正論を言われ、メンタルがズタボロだ。



『翼羽。あんた、唯織くんのことが好きなんでしょう?』


「……え」



ねーちゃんの問いに息が止まりそうになる。



「そ、そんなことっ。だって、唯織は私の幼馴染みだし…」


『唯織くんに彼女ができたら嫌ってことは、唯織くんのことが好きってことじゃないの?』


諭すように言われて、静かに目を伏せる。



私が唯織のことを好き?

だって、私と唯織はきょうだいみたいなものなんだよ。



『じゃああんたは、唯織くんが東雲さんとキスしてても、なんとも思わないわけね』


「き、キス、なんて……っ!?」



ぶわっと頬が熱くなる。


"キス"なんて大人の響きだよ…。


無理無理むりむり、考えられない。


唯織が私の知らないところでどんどん大人の階段を登っていくなんて、考えただけでものすごく嫌だ。



『もう高校生なんだから、付き合ったらそれくらいするわよ。なんならそれいじょ……いや、やめとくわ』



破裂寸前の私にねーちゃんは、『とにかく』と電話越しに息を整えた。



『そんなに苦しむくらいなら、方法は1つ。正々堂々唯織くんに告白して、彼女になることよ』


告白、と口のなかで小さく呟く。