「俺、自分の気持ちにやっと気付けた」
頭上から聞こえてくる彼の言葉を、一言一句聞き漏らさないように聴覚を研ぎ澄ませる。
「蘭さんに言われて気付いた。……いや、ずっと気付かないふりをしていただけなのかもしれない」
唯織はこわごわとした口調で、丁寧に言葉を選んで紡いでいく。
「翼羽」
名前を呼んで、唯織は私の背中にまわしていた手を緩めた。
体が少し離され見上げると、そこには唯織の顔があった。
吸い込まれそうなほどに綺麗な目で、こちらを真っ直ぐに見つめている。
鼻と鼻がくっつきそうな距離。
絡まる視線の中。
「……好きだ」
彼は私に、そっと告げた。