鈍感な彼の恋心
◇◇◇
「蘭さん、帰りましょう」
相変わらずの他人行儀に小さく息をついて腰を浮かす。
教室から出て並んで歩きながら、彼の横顔を見上げ1つ提案をした。
「……図書室、いかない?」
意地悪な女だなぁとしみじみ思う。
今頃宮川さんはいっちゃんのことを探しているだろう。
きっと、いっちゃんに想いを寄せる女子たちもいっちゃんのことを探している。
……だけど。
二人だけの時間が欲しかった。
彼女だからいいんだ、と思うことで罪悪感を打ち消す。
いっちゃんは不思議そうな顔をしながら頷いてくれた。
疑いのないその綺麗な目に私がうつっていることに、ズキズキと胸が痛みだす。
「ありがとう。じゃあ、行こ」
言葉とは裏腹に、足取り重く図書室へ向かう。