「唯織……」


ホームルームのチャイムが鳴るなり教室を出ていった唯織を見失ってしまった。


もしかするともう東雲さんと一緒に帰っているかもしれない。


必死に校内をまわる。


教室にはいなかった。屋上も見たけどいなかった。


「どこにいるの……?」


心の準備はできているのに、渡すことができなかったら意味がない。


(どうか、いて……)


願いながら、図書室のドアを開けた。


足を踏み入れた瞬間、飛び込んできた光景に目を見張る。


足が反射的に後ろに下がり足をドアにぶつけたのも構わず、図書室から飛び出した。