「バターの量、1グラム単位でしっかりはかってよ」
「はーい」
ねーちゃんの指導を受けながら、バターの分量をはかる。
溶かしたチョコレートにバターを入れて一緒に溶かす。
ねーちゃんは彼氏さんと何やらメッセージのやり取りをしながら、私のガトーショコラ作りの様子を見ている。
私はボウルの中をかき混ぜながら、ねーちゃんに問いかけた。
「あのさ、彼氏さんの名前聞いてもいい?」
私の言葉を受けて、ねーちゃんは少しはにかんだ。
「流れる河って書いて、流河(りゅうが)」
写真の顔を思い浮かべ、よく似合う名前だ、と思った。
「りゅーちゃん、チョコ嫌いだからバレンタインは抹茶って決まってるんだよね」
その言い方からして、今年が初めてのバレンタインではないことを悟る。
そしてなにより。
「りゅーちゃん…」



