「生チョコ…クッキー…ブラウニー…」


ページをめくりながら、書いてある言葉をそのまま口にする。


そのようすを横目で見ながら、隣でねーちゃんがスマホを構っている。


「なんか、全然作れそうな感じしないんですけど……」


ねーちゃんに訴えるも、ねーちゃんは「ふーん」と答えたままスマホをしきりにタップしている。


「ちょっとねーちゃん、聞いてる?」


「…聞いてる聞いてる」


そう言いながらもなおスマホから視線をあげないねーちゃんに、む、と眉を寄せた。


「何してるの?」


半ば拗ねながら訊くと、ねーちゃんは特に様子を変えるわけでもなく告げた。


「彼氏に聞いてみてるとこ。何が欲しいかなーって」


「へぇー…って、彼氏!?え、ねーちゃん彼氏いるの!?」


飛び出そうなくらいに目を見開き聞き返すと、ねーちゃんは軽く頷いた。


「いるよそりゃ」

「ええ!?何で言ってくれなかったの!?」

「なんかあんた、唯織くんのことで忙しそうだったし。しかも最近まで恋愛感情すら意識してなかったしさ」


片手でごめんなさいのポーズをつくって肩をすくめるねーちゃん。


その時、ピロン、とねーちゃんのスマホが着信を知らせた。

開かれた画面をすかさず覗きこむ。


【何でもいーよ。寧音が作るものなら】


漫画でよくみるようなセリフに、ねーちゃんはため息をついた。


「何でもいい、が1番困るのに……」


そう言いながらも、【寧音が作るものなら】という言葉に、ねーちゃんの口角があがっているのは気付かないふりをしておこう。