バレンタインデーに向けて
◇◇◇
──2月14日。
世の中の男女が互いにドキドキと胸を踊らせる特別な日。
今日はその3日前の11日。
私はねーちゃんこと、小倉寧音宅のテーブルに置かれた【本命用バレンタインのチョコレシピ】を見ながら頭を抱えていた。
「ねぇ、やっぱりつくらなきゃダメ?」
私の声に、ねーちゃんが呆れた声を出す。
「告白するって決めたんでしょうが。絶好のチャンスのバレンタインなのに、何もしないとかありえないから」
「……っ、そうだよね」
私を思っての言葉にうなずいて、本に視線を戻す。
「でも、何あげていいか分かんないんだよぉ。それに、東雲さんがいるのに私があげてもいいのかなって────うわっ」
弱音を口にする私の頬を、ねーちゃんが両側からパチ、と挟んだ。
「そーんな弱気なこと言ってないで。あたしも一緒にやるからさ」
「ねーちゃん……。そうだよね、私、頑張る!」
ねーちゃんが優しげにこちらを見ている。
親友の思いに応えるためにも、私は勢いよくうでまくりをした。