「じゃ、また明日」

「…うん」


家の前で唯織が目を細めた。


私は歯切れの悪い返事をしてうつむく。


『また明日』といっても、どうせ話せないんだろうな。



けれど、またそれを口に出せば、説明が必要になって面倒臭くなりそうだったので流すことにする。



「…じゃ」



くるりと方向を変えた唯織の背中に慌てて声をかける。


「……一緒に帰れて楽しかったよ!」


言ってしまってからカアッと顔に熱が集まるのが分かった。


その声に唯織が振り向いて、ふっと笑う。



「───俺もだよ」



その声と美しい微笑は、私の脳裏に焼き付いてしばらく離れなかった。