「───…ったく、だから言ったろ、転ぶって」
「……っ、ごめん。ありがと」
「ん」
ほら見ろといったようすで軽く受け止められ、ドクンッと一度、心臓が音を立てる。
慌てて飛び退き、それを誤魔化すように視線を逸らして、私はもう一度、紺色に染まる空を見上げた。
空はもう暗くて、夜の静けさが街を包み込んでいる。
白い雪がふわふわと、桜の花びらのように舞い落ちてくる。
暗い世界に降る純白はまるで光。
地面に舞い落ちた雪は、夜の暗闇に溶けるようにすっと消えていった。
「綺麗」
「……雪?」
「そう。雪」
ぽつり、と会話をした後、私達は歩きだした。