そんな幻想を打ち消すように首を振る。


再び視線を下に落とし、歩き始める。


「翼羽」



……今度ははっきりと聞こえた。


ゆっくり振り向くと、そこにはよく知った人物がいた。


ずっとずっと会いたくて、話したかった人が。



「唯織……」



名前を呼ぶ声に嬉しさが混じっているのが、自分で聞いていてもよく分かった。


唯織はふわりと微笑を浮かべたあと、こちらに向かって歩いてくる。


「どうしたの?」

「───…一緒に帰らね?」