縮まらない距離
◇◇◇
───…とは言ったものの。
「いっちゃん、おはよー」
隣の家なので必然的に聞こえてくる東雲さんの声。
唯織は言葉の通り、東雲さんと付き合った次の日から登校も東雲さんとするようになった。
だから、こうして毎朝東雲さんの声が聞こえてくる。
……耳を塞ぎたくなる衝動にかられる。
声を聞くだけで、唯織のことが好きってことが伝わってくる。
それに応じる唯織の声も、心なしか優しげで。
唯織に告白すると誓ったものの、その決意からすでに1週間が経過していた。
その間、話すことすら出来ていない。
登下校はもちろん、授業の合間の休憩時間や昼休みにまで、東雲さんがずっと唯織の側にいるからだ。