〈蒼side〉

 あの後頭に衝撃が走り、その後の記憶はない。

 そのはずなのになぜかルナさんの事がその時の記憶にあった。

 僕はその記憶の中のルナさんに一目ぼれした。

 つい最近まではルナさんが僕の事を覚えているか不安だった。

 「そんなことがあったんです。」

 「見たことあると思ったら君、あの時の男の子だったのか!」

 十六夜さんはとっても驚いていた。

 「お姉ちゃん、蒼くんの事知ってたの?」

 「ん~。知ってたというか話したことはないよ。あっ。蒼くん、部活はどうするか決めた?」

 「まだ決まってないです。ルナさんは何部ですか?」

 できればルナさんと同じ部活に入りたい。

 「私はサッカー部のマネージャーやってるよ。蒼くんサッカー部はいる?」

 僕は結構サッカーは得意だ

 「そうですねぇ。サッカーは出来るので入ってみようと思います。」

 ルナさんの顔が明るくなった。

 分かりやすい人だなぁ。

 かわいい

 「やったぁ!ありがと蒼くん。」

 「どういたしましてです。」

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「ただいま~。」

 「お兄ちゃん!お兄ちゃん!びびくんが何も教えてくれないの~!」

 優愛が急に走ってきた。

 「それはゆゆが!」

 美慰斗が家に来ていた。

 「お久しぶり。美慰斗」

 「蒼、聞いてよ。ゆゆが俺にぎゅってしてって言ってきて、その通りにしたら『なんか違うんだよなー』って言ったんだよ」

 美慰斗かわいそうに・・・

 「お兄ちゃん!びびくんが、ちっっちゃい声で何か言って、それで聞いたら何も答えてくれないの!」

 「もう、びびくん嫌いっ!」

 本当に優愛は・・・
 
 美慰斗は優愛のことが好きで『なんか違う』と言われたことが嫌だったんだろう。

 「へぇー、今日一緒に昼寝しようって言ってきたのに?」

 美慰斗が優愛のことを煽り始めた

 「それはっ。で、でも!びびくんだって!」

 そろそろ止めておこう

 「ほら、二人とも早く仲直りしなよ。優愛は美慰斗の事大好きなんでしょ。美慰斗も。」

 「はぁ。ゆゆ、ごめん。」

 あとは優愛が・・

 「びびくん、ごめん。」

 何だか小学生の相手をしているような気分だ

 「そうだ。蒼は何の部活に入るの?」

 思い出したように聞いてきた。

 「サッカー部に入ろうと思う。」

 美慰斗がニヤニヤしている。 気持ち悪い

 「十六夜さんがいるから?」

 え?なんで知っているんだ?

 「お兄ちゃん。誰?それ」

 優愛にも知られたら面倒だ

 「何でもないよ。美慰斗くんちょっとこっち来ようか。」