学校に着き、自分のクラスを確認していると僕の友人、
  幸介が僕に声をかけてきた。      
   
 「よお!元気か?蒼」

 「うん。元気だよ。幸介は何組だった?」

 「蒼と同じB組だったよ。」

 「他に僕たちが知ってる人はいた?」

 「ん~健斗と由真と白雪と・・・そんぐらいかな。」

 僕たちはB組に向かった。
 
 そこには「あの人」に似た女子がいた。

 僕はその女子に聞いた。

 「ねぇ。君にお姉さんっていたりする?」

 「えっと・・・」

 僕は自己紹介もせずいきなり変な事を聞いたことに気付いた。

 「あぁ。僕は北里蒼。第二中から来たんだ。」

 「そうなんだ!私は十六夜光星。光る星って書いてひかりって読むの。」

 「光星。いい名前だね。」

 「ありがとう!だけどたまに『こうせい』って読まれちゃうことがあって。」

 彼女は小さく笑った。

 そして雰囲気が「あの人」に似ていた。

 胸下まで伸びたきれいなストレートの黒髪。

 透き通った青が入ったような大きな目。

 「そうだ!私のお姉ちゃんなら3年D組にいるよ。一緒に来る?」

 「ありがとう。じゃあいっしょに行こうかな。」

僕と十六夜さんは薄暗い階段を上り、3年の教室に行った。

 「お姉ちゃん!お姉ちゃんに会いたがってる人を連れてきたよ。」

 お姉ちゃんと呼ばれたその人は初めに出会ったときと全く変わっていなかった。

 「お姉ちゃん、紹介するね。私のクラスメイトの蒼くん。」

 僕は名札を見て呟いた。

 「ツキさん・・・」

 「蒼くん、私の名前は『ツキ』じゃなくて『ルナ』だよ。」

 ルナさんは僕を見てクスクスと笑いながらそう言った。

 「ところで蒼くんはどうして私に会いたかったの?」

 と微笑んで言った。

 「それは・・・」

 会った時のことを話そうとしたら幸介が息を切らしながら言った。
 
 きっと走ってきたのだろう。

 「蒼、十六夜 今日が入学式だってことを忘れてないか?」

 「「あっ」」

 まずい。ルナさんに会うことで頭がいっぱいになってすっかり忘れていた。

 「お前ら、先輩と仲良くなりたいのは良いけど流石に入学式に遅れるのはまずい
  だろ。」
 
 全力で走った(幸介が引っ張った)おかげで入学式に間に合った。

 その後、僕と十六夜さんは入学早々先生に注意された。

 「十六夜さん、ごめん。僕のせいでこんなことになって。」

 「ううん。平気だよ。それに誘ったのは私だから。」

 「そんなっ・・・元はと言えば僕が・・・」

 「私、先生に怒られるのは慣れてるんだっ。よしっ。もう一回お姉ちゃんに会い        
  に行こうか!」

 十六夜さんは笑ってこう言った。

 (十六夜さんが先生に怒られてたって以外だなぁ。)

 「おっ。蒼くんと光星!大丈夫?あの先生怖いからさぁ。」

 ルナさんが駆け寄ってきた。

 「平気だよ。お姉ちゃん。さっきの蒼くんの話聞いてあげてよ。」