体育教官室から体育倉庫までの道のりでは、2階にある渡り廊下を通るのが一番の近道だ。


渡り廊下の扉を開けたところで、初夏の陽射しが容赦なく照りつける。
それと同時に、見覚えのある明るい茶色に染められた髪の毛が目に入って、その頭が誰なのかすぐに分かった。



「丁度良かった!荷物運ぶの手伝って!」

「……えー」

なんて面倒臭そうに声を出したのは、同じクラスの男子。

吉田 遥太(コウタ)だ。


吉田は3段しかない階段の2段目に座っていて、顔だけを私に向けた。




「つべこべ言わないのー!さぁ運ぶ!」

「中村こえ~」

「なんか言った?」

「……いえ、何も」


吉田は溜めをついてから立ち上がると、私のかかえていた段ボールをヒョイッと持ちあげる。


流石、男子。


吉田なんてヒョロヒョロしてそうなのに力はあるんだな。なんて少し感心してしまう。