『どうかしましたか?』ニコラの声が聞こえてハッとして我に返る。

「ねぇ、どうしてこれを持ってるの?」

(間違いなく“あの日”捨てたはずなのに……
なのに、なんで……)

驚いてそう尋ねると──

『僕には、ノートや本、マンガ道具はキミにとって大切なものだと思ったので時間を遡って持ってきたのですが……』

わたしの顔を覗き込む彼の目が『もしかして、まずかったですか?』と問いかけている。

そんな彼に、小学生のとき先生にほめられたことがうれしくて絵を描くようになったこと。
クラスメイトの一言がきっかけでマンガ家を目指そうと思ったこと。

だけど、中学生のときクラスメイトの言葉がきっかけで絵に自信が持てなくなり、絵を描くことが怖くなったこと。
いつしかマンガ家になるという夢も忘れ去っていたこと、気づけば溜まっていた思いを彼に吐き出していた。