話を終えた稲葉が雅の方にやってきた。




「小鳥遊、ちょっといいか?」





「ん?何?」




一度外に出た稲葉と雅。雅は稲葉まで調子が悪いのかと疑った。





「ここならいいか」




何やら辺りをキョロキョロ見て警戒している様子だ。不安になった雅はその理由を問う。





「どうしたの渉。身体の調子悪いの?」





「は?誰がそんなこと言った?ただ俺は…」




いきなり顔が近づいてきて驚いた雅は目をつぶると、何やら背中に違和感を感じ、慌てて目を開けた。





へ?





「こうやって雅を抱きしめたかっただけだ」




首元で顔をすりすりしながら雅の小さな身体を包み込む稲葉はやはりどこか様子が変だった。






もしかして渉…。





「緊張してるの?」




図星だったのか稲葉の身体はビクッと跳ねる。




「悪いかよ……。井口先輩の思いを背負ってるし、いきなりレギュラーの試合とか緊張するだろ?」