稲葉の大きな手が雅の頭の上に優しく置かれた。すぐにその手は離れたが、その感触はまだ残っていた。





「稲葉くんの手ってこんなに大きかったんだ」






「ん?何か言ったか?」





「な、何でもない…!早く準備してコテージに戻ろう。一時間後にはバスに乗って帰るんだから」






グイグイと稲葉の背中を押して競技場を出ていった。






「おーい水谷。今日は惜しかったな」






海氷の三年生の先輩が試合に負けて落ち込んでいる水谷を励ましにきた。






「次勝てばいいんですよ。また指導お願いします」






丁寧に頭を下げた水谷は一人、荷物を持って帰りのバスに乗り込む。






「次は絶対あいつを倒してやる。このまま負けるとか俺はそんなの許さねぇ」