明日が終わる、その時まで【完】



「柴田、私はね、会ったことないけどママのことが好き」


雲一つない青空を見上げる。


「物心つく前から、私にはパパしかいなかったから。正直、ママへの愛情はほんどなかった」


会ったこともない人、育ててもらっていない人に、幼い私は愛情なんて湧かなかった。


「でもね、だんだんと家の中にママがいないことは普通じゃないってことに気づいた。ある日初めて自分からママのことをパパに尋ねたの」


『ねえパパ、わたしのママってどんな人?』


私からその言葉が出てくる日を待っていたと言わんばかりに、パパはママのことを教えてくれた。

ママとの出会いから結婚するまでのこと、結婚してからのこと、妊娠して、出産するまでのこと。

ママの写真、ママがいる映像もたくさん見せてもらった。




「パパからママの話を聞いてうちに、私はどんどんママを好きになっていった」


私の誕生をどれほど待ち望んでいたか。

まだお腹の中にいる私を、どれほど愛して守ってくれていたか。

パパは毎日、本当に毎日、とめどなく、ママの話を聞かせてくれた。




「ママに生んでもらえて幸せだったなぁって、思えるようになったんだ。会ったこともなければ、喋ったこともないのに不思議だよね。だから……おばあちゃんが私を嫌いになる気持ちはわかるの」