明日が終わる、その時まで【完】







なんでもない日常が再び戻ってきた。

小春と、柴田と、福沢くんと。2組のみんなと。平凡だけど大切な一日を繰り返していると、あっという間に雨は上がった。


関東の梅雨明けが発表された――7月12日。



「ねえ、ここに置いてある手桶(ておけ)柄杓(ひしゃく)って使っていいの?」

「いいだろ。知らねえけど」

「どっち!」


私と柴田はお母さんが眠る霊園を訪れていた。

『母さんの命日だから、一緒に行ってほしい』と、柴田にお願いされたときは、ちょっと食い気味に『もちろん』と返事をしてしまった。

だって、お墓とはいえ、お母さんのお骨が眠っているところに招いてもらえるなんて、こんな光栄なことはない。


お母さんの前に立ち会ってもいい人間だって、柴田に思ってもらえたようなものだから。


だけど、手桶や柄杓なんて使ったことがないから、そもそも勝手に使っていいものなのかもわからないから、霊園に足を踏み入れてからはなにをするにも柴田に尋ねていた。


「墓参りくらいしたことあるだろ?」

「あるけど……勝手が違うからわからないの」


パパのお父さんとお母さんは永大供養だから、こういう一つ一つお墓が存在する場所にくるのは、実は初めてだった。


「ねえ、このブラシってここの? 使っていいんだよね?」

「いいだろ。知らねえけど」

「だからどっち!」

「いいから。ほら、行くぞ」


たっぷり水が入った手桶をひょいと軽々持ち上げる柴田。

その後ろを、持ってきたお花と蛇口の近くに置いてあったブラシを持って、ついていった。