明日が終わる、その時まで【完】





理由か……。しいて言うなら、



「現実が空想を超えることもある」


「あ?」



柴田が首を傾げる。

わけがわからないというように。



「空想とまではいかなくても、予定調和じゃないことが起きることってあるでしょ」

「まあな」


柴田が頷く。

すると、席に座っていた二郎が突然立ち上がる。


「だめだ。話難しすぎて全然ついていけねー。俺、おばさんと三郎と飲んでくる」


二郎は頭を抱えながら、グラスを持ってリビングに行った。

ちなみにグラスの中身はオレンジジュースだ。



「佐野さん、続けて続けて!」


わくわくした顔で話を促す福沢くん。

私は軽く頷いて、続きを話し始めた。



「私さ、前にパパと一緒に鎌倉に遊びに行ったとき、モノレールに乗ったの。終点の駅から乗ったから、出発までちょっと時間があったんだよね。だから車両の中で待っていたんだけど、ふっと窓を見たら、反対側のホームの女子トイレの前にピンク色のパスケースが落ちていたの。まだ時間があったから、すぐに走ってパスケースを拾って駅員さんに届けた」


終点である湘南江の島駅は、左右のホームが繋がっているから車両から降りてもすぐに戻ってくることができた。

時間がギリギリでホームが繋がってなければ、見過ごしていたかもしれない。



「車両に戻って、私なにげなくパパに言ったの『落とした人どうやって改札出たのかな?』って」


だって、パスケースの中には交通系ICカードが入っていたから。

改札の前で落としたのなら、どうやって改札を出たのだろうって単純に疑問で。


「女子トイレの前に落ちていたから、もしかしたら今女子トイレに入っている人が落としたのかも、とも思った。改札を出る前にトイレに入ったなら、まだ改札は出てないことになるし」


あの状況を見れば、ほとんどの人が私と同じような考えを抱くと思った。


「だけど、パパはこう言ったの。『交通系のカードは他にもあるし、違う種類のを使ってたんじゃない?』って。私はそんなことあるかなって言った。わざわざ違う種類のカードを持ち歩くなんてあるかなって。そしたらパパがお財布を出して見せてきた『僕は持ち歩いてるけど?』って、2枚の交通系カードを」


まずそこで、私の考えが及ばないだけでそういうこともあるんだなって、思った。



「そしてこうも言った。『そもそも、その日はカードじゃなかったのかもしれないよ。だって、改札を通るとき、わざわざパスケースからカードを出す?』って。『切符だったのかもしれないし、スマホだったのかもしれない』って」


「なるほど。それはそうだよね」