明日が終わる、その時まで【完】





「最初に柴田と屋上に行ったとき、マンションの向かい側で何かが光っているのが見えたの。向かいの建物の窓ガラスが太陽の光で反射しただけかなって思ったんだけど、でもそれとは違う光りに見えて、その時すごく違和感を覚たの」


福沢くん、二郎、柴田に視線を移しながら、続きを喋る。


「その後は、もう光のことなんてすっかり忘れていた。だけど、体育の授業でグラウンドにいた時、全く同じ光を見たの。そしてその光が、カメラのレンズが太陽の反射によるものだってわかった」


その時点ではまだ、完全一致だとは思わなかったけど、違和感を覚える光なんて感じたのは人生でその2回だけだったから、確信はあった。


「それで、もしもそれがカメラのレンズの光だったら。おかしいじゃん……なんでカメラのレンズがマンションを向いてるの?」


マンションが建つ方角には写真に映すような珍しいものなんてない。

空や星とか、景色を撮るなら、カメラの位置はもっと上を向いているはずだ。


なにより、



「太陽の光によってカメラのレンズが反射して光ったってことは、レンズの蓋は外されていて、さらには窓も開いていたことになる。つまり、常に写真を撮れる状態だった。もしくは、常に撮っている状態だった。ベストポジションで」

「それでっ?」


福沢くんの目は小さな子どものようにキラキラしていた。


「可能性はすごく低いけど、人知れずそういう趣味を持っている人間がいるかもしれないって思ったの。で、そういう盗撮とか盗聴を好むマニアは常習性があるから、光が見えたマンションも古く見えたし、もしも何年もその趣味を楽しんでいたとしたら……柴田のお母さんが亡くなった真実を映す物的証拠が存在するかもしれないって思ったんだ」




「晶ちゃん、なんかすげー。だって全部ただの想像だろ?」



二郎が感心したように腕を組む



「うん。完全な想像。私の都合のいい妄想。正直、可能性は1%もないって思ってた」



マンションで見えた光とグラウンドで見えた光が一致したとき、私の脳裏をよぎった想像。

私にとって都合のいい妄想。



「1%もねえのに、人に授業さぼらせて、自分もさぼって、あんなことまでしたのかよ」


理解できないと言わんばかりに(かぶり)を振る柴田。


「うん、そうだよ」


「なんでそんなことできんだよ。1%以下の可能性のために、普通しねえよ……お前は、なんでいつもなんの迷いもなく突っ走れるんだよ」


馬鹿にしてるわけでもなく、呆れてる風でもなく、純粋に私が1%以下の可能性であっても、突っ走れる理由が知りたいという顔をしていた。