明日が終わる、その時まで【完】




「晶ちゃん、ありがとう」


柴田のお父さんが私に体を向けて、頭を下げた。


「いえ。こちらこそ、今日はこんな大切な日に呼んでいただいて、ありがとうございます。佳代子さんも、ありがとうございます」


私は、柴田のお父さんと、佳代子さんの二人に頭を下げた。


「佳代子が、ちゃんと時間をつくってやるべきだって言ってくれたからな」


お父さんが佳代子さんに目を向ける。


「だって……薫さんのお葬式の後、1周忌も、3回忌も、その後もやってないって言ってたから」

「うん。自死だとばかり思っていたからな……家族や親せきが集まって、薫の昔話に花を咲かせるなんて、どんなに時間が経っても、そういうことができる状態じゃなかったから。俺も、薫の親や親せきも、とにかく薫の存在を忘れたかった。薫が自殺したことを忘れたかったんだ」



お母さんを思い出すと、必然的に亡くなった手段も思い出してしまう。

だったら存在そのものを記憶の中から消すことで、辛い過去を払拭(ふっしょく)する。


それが、お父さんが〈今日〉を生きるための、唯一の方法だったのだろう。

自死遺族は、自分が死ぬその時まで、そんな葛藤とともに生き続けているのかもしれない。