心配になって柴田の服を引っ張ると、今度は急に体を反転してきた。

さっきまで頑なに振り向かなかったくせに。


「ねえ、大丈夫?」


ようやく向き合った柴田の顔は、普段通り。

いや、少し雰囲気が違う。


あれ? 少しじゃない。

柴田って、こんなに穏やかで優しい目してたっけ?


()き物がとれたような、すっきりした澄んだ瞳。

おばあちゃんの死にきちんと向き合えたことで、自分の中の殻が破けたのかな?


「顔、変わってる」

「あ? 寝ぼけてんのか?」

「寝ぼけてないよ。もう起きた」

「じゃあどう変わってんだよ」

「格好良くなった」

「……」



柴田の顔が、首から赤く染まる。


なんだ、照れてんの? 

そっか、照れてんの。

照れてやんの。可愛いやつ。


笑いを必死にこらえているのが柴田にもバレバレだったようで、


「……お前、覚えとけよ」


まだ少し赤い顔で私を睨みつけ、そう吐き捨てた。


覚えておくよ。

柴田が照れて首から顔真っ赤にしていたこと。

こんな可愛い瞬間、きっと忘れないと思うけどね。