二人がcafeを出た後、店長とツカサは話をしていた。

そこで店長から、ツカサへのバレンタインがコーヒー豆になった理由を聞かされた。

「…あいつ…」とツカサは嬉しそうにしながらも、

「…そんなに俺のこと考えて選んでくれたんだ…けど、本命じゃないんだよな…？」と少し切なそうに言った。

「なんだ？複雑か？珍しいな。お前が複雑そうな顔するなんて」と店長は笑う。

「…店長、慰めてくれます？」と言うツカサ

「おー、良いぞ。どーしたら良い？」と店長

「一緒に飯、行ってくれませんか？店長の奢りで」とツカサが言うと、

「飯？全然いいよ。なんでも奢るから、２人で好きなん食べに行こう」と店長は言った。

ツカサは内心かなり喜んでいる。

作戦だった。

ツカサは店長のことがずっと好きで、このバレンタインに告白するつもりでいるからだ。

２人は何とかcafeの仕事を終え、店を閉めて、ディナーを楽しむために歩きだした。

その頃、遥と綾斗は無言で歩いていた。

無言に耐えきれず、口を開いたのは綾斗だった。

「先輩…俺、先輩からバレンタイン貰ってないんですけど…」だった。

遥と綾斗は立ち止まった。

遥はこの日のために、一生懸命準備した。けど、渡す勇気が持てない。

本命だから。

俯く遥に、綾斗は声をかけた。

「…俺、迷惑でしたか？もしかして、先輩の好きな人は…ツカサ先輩なんですか？」と。

遥は勢いよく首を横にふる。

「…んで、そう思ったの？…」少し震える声で遥は聞いた。

「…だって泣きながら渡してましたよね？押しつけるように…あれって、ヤケクソみたいなもんじゃないんですか？」と綾斗は言った。

「違うよ。けど、ホントに一生懸命準備したし、店長にもたくさん協力して貰ってて想いもちゃんと込めてただけに、軽そうな言い方に少し複雑な気分だったの。しかも、チョコ無いの？なんて言われて。用意したの、チョコじゃなかったから…」と遥が言うと、

「…チョコじゃなかったんだ…」とボソッと綾斗は言った。

「チョコに合うコーヒー豆だったの。私がブレンドしたオリジナルの…」と遥は言った。

「…そうだったんだ…あ、じゃあ店長にあげてたやつは？」と綾斗は聞く。

遥は深呼吸してから

「…それは…あなたが嫌だって言うから…買ったやつにした」と顔を赤くしながらうつ向いて言う。

「えっ？どーゆうこと？」と綾斗が言うと、

「…察しなさいよ！バカ…」と遥は言って、手作りのチョコを押し付けるように渡した。

「それ、もしかして俺が好きってこと？これは本命で、俺のために手作りしてくれたってことで良いんだよね？」と綾斗は言う。

頷く遥に近寄ると、

「めちゃくちゃ嬉しいです！ありがとうございます！大好きです。先輩」と綾斗は言ってキスをした。

「…私も…」と小さく笑った遥

２人はお互いにしばらく体温を感じ合っていた。

しばらくして、二人は手を繋いで歩き始めた。

恋人になった愛を噛み締めながら。